マシュー・マクファディンを中心に : I Love, I Love, I Love You

イギリス人俳優マシュー・マクファディン(Matthew Macfadyen)周辺などに関する備忘録。
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"War Horse" at New London Theatre

2013年2月14日にロンドンのニュー・ロンドン・シアターで
"War Horse(舞台版「戦火の馬」)"を観てきました!

2014年8月17日追記

2014年8月に観た来日公演の感想はこちら
追記ここまで

劇場外観の画像や開演まではこちらの記事で

マイケル・モーパーゴ原作の同名の児童書を元にした作品で
元々、ロイヤル・ナショナル・シアター(オリヴィエ・シアター)
で上演されていたもので、パペットの馬や舞台の完成度が評判となり
オリヴィエ賞、ブロードウェイ版もトニー賞を受賞、
さらに同じ原作とこの舞台を元にスピルバーグが映画化し
児童書や舞台作品になじみのない層にも知られるようになりました。

私とこの作品の出会いは数年前のロンドンのホテルのロビー。
チラシのジョーイと目があったのがきっかけでした
(当時はNTでの上演中だったはず)。

現在、複数の国や都市で上演中で、
ロンドンでは劇場をニュー・ロンドン・シアターに移して
ロングランが続いています。

"War Horse(舞台版「戦火の馬」)"
原作:マイケル・モーパーゴ
舞台版原作:ニック・スタッフォード
演出:マリアンヌ・エリオット、トム・モリス
上演劇場:ロイヤル・ナショナル・シアター(オリヴィエ・シアター)、
       ニュー・ロンドン・シアター、他
上演時間:約2時間40分(休憩込)
上演期間:2007年10月17日-2008年2月14日、
       2008年9月10日-2009年3月18日(NT)
       2009年3月28日-楽日未定(ニュー・ロンドン・シアター)

あらすじ:

1912年8月、デヴォン州に住む貧しい農夫テッド・ナラコットは
酔った勢いで自分には必要のない
サラブレッドとアイリッシュ・ドラフト・ホースの混血の子馬を競り落とす。
自分の家にハンター(狩猟用馬)は必要ない、と妻のローズは激怒するが、
息子アルバートがこの馬を農耕馬に育ててみせる、と宣言、
ジョーイと名付けて世話をし、少年と馬は強い絆で結ばれていく。

2年後、ジョーイは若馬に成長。
必要に迫られ、期限内にジョーイに
鍬を引かせられるようになることを要求されたアルバートは
何とかそれをやり遂げる。

しかし、その一か月後、
イギリスはドイツに宣戦布告をし、国は戦争状態となり、
騎兵隊が馬を買い付けに来ていると聞いたテッドは
アルバートに黙ってジョーイを大尉ニコルズに売り渡してしまう。

アルバートが食い下がるも、子供の力ではどうすることもできず
ジョーイは軍属の馬となり、アルバートの元から去っていく。

軍馬となったジョーイはイギリス軍、軍馬仲間のトップソーン、
ドイツ軍、フランスの民間人、色々な人や馬と出会っては別れていく。

一方アルバートは
ジョーイを大事にする、と約束したニコルズの戦死を知り、
ジョーイを探し出すために自らも軍に志願して戦場へ向かう…

※原作、舞台、映画各バージョンで細かい設定の違いが散見されますが
 上記あらすじはすべてにのバージョンに大体共通したものです。


以下原作を読んで映画を見てから…を踏まえての感想となります。

※私は「戦火の馬」に関しては原作至上主義のため
 舞台版、映画版(特に後者)に否定的な発言もありますのでご注意ください。
 また、ニコルズとジェイミーとトップソーンとジョーイが好きなので、
 そのあたりの感想が多くなります…。
 ちなみに英語が全然できないのでいろいろ勘違いあるかと思います…。



パペットの馬が素晴らしい、というのとちょっとだけプロットを読んで
原作とも映画とも違うところが多々あるらしい、くらいの予備知識で観ました。

設定や変わっていく状況の説明などを舞台上に現れる歌い手や、
キャストたちの合唱で進めていく方式を取っていて、
だからこの作品をミュージカルだと思っている人がいるのか、と思いました。
少なくともトニー賞では「プレイ」部門だったことと、
「キャラクター」としては歌を歌わない
(たとえばアルバートやニコルズの歌、というものはない)ので
自分はミュージカルだとは思っていないのですが…。

で、この歌、すごく自分好みでした!
歌い手さんの声も、曲調もすごく良い感じで一気に物語世界に引き込まれました…!
歌以外の曲の感じもよくて、サントラを買おうと思ったのですが、
きっと歌い手さんのキャストが違うよね、と思い
オリジナルキャストの方の声がわからないのでちょっと躊躇中、
でもきっと買うと思います。

背景は(少なくとも第一幕は)ニコルズの描いたスケッチ…
という設定なのか、それがスクリーンに映し出される形で
これもまた素晴らしかったです。

この背景に使われた絵がスケッチブックに描かれたもの、
という設定で売られていたのですが、
自分には内容の割にちょっと高すぎたので買いませんでした…。
「ニコルズのスケッチブック」という商品名(笑)で、
原作や映画のようにリアルな感じで描かれた馬が
沢山載っていたら買っていたのですが、
それだと舞台とはあまり関係なくなってしまいますしね…。

舞台作品として自体はひきこまれていたのですが、
最初から「ん?」と思うところも…

まず、WWI開戦2年前だというのに軍服姿のニコルズ「中尉」がセリに参加していて…。
舞台版では常備軍所属設定だったのかしら、とも思ったけど、
あとのシーンでアルバートが「ヨーマンリーに…」と言っていたのでやはりどうなの、と。

「パートタイム」軍(騎兵隊)であるヨーマンリーは
戦時でなくとも組織されていて「週末」には訓練もしていたりしたりはしたようですが、
ヨーマンリーの士官=上流階級の出、しかも特に平時の士官は
おそらく自分が元々所有している馬を連れての参加のハズなので、
わざわざ軍服で自らセリに来るか~?とか、
他のセリに来ている労働者階級の人たちのやり取り
(というか、ニコルズの振る舞い)もちょっとどうなの感がありました…。
いや、彼がすごく「庶民派」だとしたのならあり得ない話ではなさそうですが…
どうなんでしょ…。
映画版のニコルズのテッドに対する言葉使いですら逆の意味で
(当時の上流階級が労働者階級に"~,sir"なんて言うか?と)
ひっかかった自分には違和感ありありでした…。
(ちなみに原作では"farmer"と呼びかけている)

ニコルズに関しては、キャラクターもすごく変わっていて…
もちろんアルバートに「大事にする」とはいうのですが、
訓練の方法もすごく強引だったし、トップソーンとの引き合わせ方も、
「え、これニコルズじゃない…!」という感じで…。

ちなみに最初中尉だったニコルズは、ジョーイを買う時点では大尉に、
フランスに渡るところで少佐に昇進していました。
映画版ではジェイミーが行っていた
"Be brave!"のスピーチも舞台版ではニコルズのセリフでした。
これ、原作にはないもので、印象的ではあるものの、
原作のニコルズとジェイミーのキャラクターには合わないので
私はあまり好きではないシーンなのですが
(まあ、原作のあの二人もああいう場で部下に向かっては
ああいうスピーチをすることもあるのでしょうが)…。

おそらくスピルバーグは「原作のニコルズ」を残したくて、
舞台版のニコルズのキャラクターを
ジェイミーに担ってもらったんだろうな、と思います。
ニコルズを原作に忠実にした点ではスピルバーグに感謝!

舞台版ジェイミーはしいて言うなら映画版のチャーリーという感じで
ちょっと軽い印象を受けました。
舞台版でも映画版でも原作と全然違うジェイミーですが
ニコルズとジェイミー共に原作通りにすると
ちょっとキャラが被ってしまって分かりにくいのかも、と思いました。
それと二人とも大尉なのはちょっと無理があるのかもな、とか…。
(でもやっぱり原作の二人が大好きなので…う~ん…)

トップソーンも映画版同様ジョーイを威嚇、
どころか蹴りいれたりとかしてそんな子じゃないのに、とすごくショックでした…。
舞台版はトップソーンとジョーイの友情、というところが全然見えてこなくて
原作においてはかなりの「肝」だったのですごくガッカリしました…。

一番好きなキャラクターたちが徹底的に逆方向に変えられていて
すごくすごくショックで第一幕が終わった時点では
ちょっと悪い意味で放心状態だったのですが…

あ、ちなみにジョーイとアルバートの関係は
原作には及ばずとも、映画版よりもずっとよく描けていたと思います。
映画版ではジョーイとアルバートの絆、というものが自分には見えず、
おそらく製作者サイドとしては「感動して!」な鍬引きシーンも
アルバートの身勝手さにずっとイライラしっぱなしでしたが、
舞台版ではそういうことは感じませんでした。
少しコミカルな感じに描かれていたのが良かったのかも。
鼻に息を吹きかけあうシーンもかわいくて!

原作と同じく、ニコルズが戦死した戦いではジェイミーは捕虜にはならず、
原作にも映画版にも登場しない舞台版のオリジナルキャラクター、
ビリー・ナラコットがジョーイの新たな乗り手となります。
アルバートのいとこ、という設定だったかと思いますが、
冒頭で彼の父とテッドがジョーイの所有権を争っていたのでした。

このキャラクター、スクリプト(およびNTの初演時?)には
ネッド・ワレンという名前だったようで、原作で私が好きなキャラクター
(というより、彼に対するジェイミーの言動が好き)の一人、
チャーリー・ワレンくんがもとになったキャラクターだったようです。
(ただし、あくまで共通するのはニコルズの死後、
ジェイミーに言われてジョーイの乗り手になることだけ)

スクリプトはまだざっとしか見ていませんし、
英語ができないので舞台で聴いた歌の歌詞やセリフが全然わかっていないのですが、
スクリプトと実際に観た舞台にはいくつか相違点があるようで、
例えばスクリプトではニコルズは最初からニコルズ少佐になっていたり、
ジョーイとトップソーンの関係も何となく少し印象が違うように感じました。
リバイバル上演、というわけでもないでしょうにこういうことってあるんですね。

ジェイミーとビリーが捕虜になったところで第一幕は終わり。

休憩は30分もありました。
私は観劇文化が全く身についていないので、どうもこの長い休憩になれません…。
ちゃっちゃと第2幕やろうよ、という感じなのですが…
舞台装置のセットなどがあるようなので、まあ仕方ないと言ったら仕方ないですかね。
皆さん、お手洗いに行くより客席に売りに来るアイス食べているって感じでした…。
そして客席内でモノを飲み食いするのにもなれないワタクシ…。

いよいよ第二幕。
前半の好きキャラたちの変わりぶりを観ていて、
この後がどうなるのか大変に不安でした…
というのも、映画版で最もガッカリした、というか
観ていて怒りさえ覚えたのがドイツ軍の描き方だったので…。

「ドイツ軍を悪魔のようにはに書けなかった」なんてどの口が言うのさ!
そうしたいなら、原作の通りに描けばよかったんですよ、と…。

原作で私が好きだった、作品の精神を表しているともいえるジェイミーのセリフ、
ドイツ軍のキャラクターとそのセリフをすべてカットして、
原作にはないキャラクターやエピソードを入れた意図が全く分かりませんでした。

ドイツ軍の脱走兵兄弟のエピソードは原作にはないのです。
詳しい方曰く、「兵士ピースフル」というモーパーゴの
別の小説から持ってきたエピソードだろう、とのことですが、
それはきっと英国軍の話で、
あえてあれをドイツ軍で描く必要はなかったと思うのですよ。

…と、話が映画版にそれてしまいましたが、
あのエピソードは舞台にはありませんよ、と
観劇経験のある方にお聞きしていたのですが、それでもまだ不安でした…
が、実際見てみるとその不安はすぐに吹き飛びました。

ドイツ軍パートの主役となるのは、原作でドイツ軍パートの主役とも言える二人を
うまく組み合わせたキャラクターでした。

一人は映画版には出てこないハウプトマン。
負傷した竜騎兵将校で馬マニアぶりのすごいキャラクター。
このハウプトマン、原作では苗字になっていますが、ドイツ語で「大尉」を表すらしく、
舞台版ではフリードリヒ・ミュラー大尉、という名でした。
もう一人は、舞台版の名が示す通り、原作と映画にも登場した
トップソーンにほれ込む砲兵部隊の変わり者の老兵、フリードリヒ。

この二人の融合はちょっと無理があるところもありましたが、
よくできていたと思いました。

ただちょっとだけ気になったのが、「良い」キャラクターである
フリードリヒだけが英語を話す、という設定だったこと。
英語圏の映画などではよくあることですし、英語圏の子供にも向けた舞台版で
ドイツ語やフランス語を使っていること自体が驚きだったのですが
それでも、他が良かっただけに残念でした。

良かったけど、残念な部分も、はエミリーのシーンも。
エミリーと一緒に暮らしているのが舞台版では母親だったのです…。
あれはおじいさんだからよかった、と個人的には思っていたので…
しかも、エミリーの(多分)最後、も原作とは違っていて残念でしたし、
ラストのあのシーンをどうするんだろう?とこの時点で不思議に思ったのでした。

エミリーのシーンのラスト、大変にがっかりした映画版よりは良かった、
とは思いますが、これもちょっと現実的には無理がある設定だった気が…。

ちなみに、このあたりでアルバートが絡んでくるのですが、
アルバートは原作と違い年を偽っての入隊、という設定のようでした。
映画版でアルバートが年を偽ったと勘違い?した人がいたのは
舞台版の情報を得ていたから?

ちなみに原作では、アルバートが入隊可能年齢になる前に戦争が終われば、
と思っていたニコルズの願いもむなしく、それだけ戦争が長引いた、
ということも背景にあるアルバートの入隊、という設定のハズだったのですが…。

ちなみに原作では動物(主に馬)担当の衛生兵だったアルバートは
舞台版では前線に出る兵士でマスタードガスで一時的に視力を失う、
という設定になっていて、映画版は舞台版から
設定を拝借したのだな、と思いました。

さすがにいくら泥だらけでも目の前にいたら
ジョーイだってわかるでしょ、ってことなのでしょうかね…。

ジョーイのドイツ軍との別れ~戦車との出会い~
パニックを起こしノーマンズ・ランドで鉄条網に絡まるシーンは
小説よりも映画のあの映像で見た衝撃がすごく強くて、
あれを見ていたからこそ舞台版で鳥肌が立ち、
ジョーイの痛々しい様に目を覆いたくなったのだと思います。
映画版のあのシーンは本当に圧巻でした!!

ちなみに映画を見ているとき、
まだジョーイが有刺鉄線に絡まっているシーンで
ドイツ兵と英国(厳密にいえばウェールズ)兵の
ちょっとコミカルなやり取りがあり笑っている観客がいたのですが、
私はジョーイの痛々しさに笑う気にはとてもなれませんでした…。

が、舞台版では(原作と同じく)ジョーイを助けた後に
そういったコミカルなトーンになるのでよかったです。

最後のジョーイとアルバートの再会から帰国まではあっさりとしていて、
そんな簡単に帰国できていいんか…とも思いました…
エミリーのおじいさん、いらなかったね…。
(ちなみにNAMのWH展に展示されていた原作の初版本は
表紙がジョーイとエミリーとおじいさんのイラストでした)。

原作では再会後も将校の馬以外はセリにかける、
ということ以外でもジョーイの傷の具合が…とか、
後方勤務なのに親友が…などいろいろまたあるのですが…。

しかし、舞台作品としてはこれで良かったと思います。
観終わってみると、本当に「見て良かったー!」という思いが強くて
映画版を観終わった後の気分とは真逆でした(汗)

多分、映画版で踏みにじられたと(少なくとも自分は)感じた
原作の「精神」を舞台版は変更はあれど見事に表していたからだと思います。

原作の大事なところさえ押さえてくれていて、
作品としての完成度が高ければ、原作に忠実でなくてもいいんだ、
ということを改めて教えてくれた舞台版だったと思います。

もちろん映画版もニコルズの描き方、ジョーイの暴走の描き方、
そしてテッドとローズの描き方は秀逸だと感じていますし、
映画があったからこそ原作を読んだり、
舞台を観る人も爆発的に増えたでしょうし、
NAMのWH展も開催されたのでしょうし、
自分がヨーマンリーなどについて調べたい、と思ったところもあるので
そのあたりは本当に映画版を撮ってくれたスピルバーグに感謝しています。

そして、原作を読み、映画と舞台を観たことで
それぞれの好きなところを自分の中で反芻していって、
自分の「戦火の馬」というものがまた出来上がっていくのかな、と。


ところでうわさに聞いていましたが、
テッドたちの英語はデヴォンなまりがすごくてスクリプトの表記もそんな感じでした。
自分はもともと英語ができないのであまり関係なかったのですが、
英語ができる方はかえってとまどうかもしれません。

席に関しては、私は少しのお金を惜しんで今回2階席を選択してしまいましたが、
これからご覧になる方はぜひ!1階席のなるだけ前の方で見ることをお勧めします。
その方が絶対に迫力があるし、背景などの関係からもいいと思います。
私も次回、観る機会があったら1階席で見たいと思っています。

多分お安い当日券も出ると思いますが、
予約していきたい、という方(私もそうでしたが)は
こちらの舞台版公式サイトから買えます。

最後に動画をいくつかご紹介しますね~。
NT配信の舞台版公式トレーラー
歌などの雰囲気がわかって頂けるかと。


こちらはwarhorseonstageというアカウント
(多分NTの手からある程度離れた後にできた公式アカウント)があげていたトレーラー。

こちらも曲の素晴らしさ、パペットや舞台自体の素晴らしさが垣間見られるかと。
本当に歌が素晴らしい…今聞いても鳥肌立つ…。

その他"War Horse"の舞台裏(?)動画を
NTの公式アカウントが配信していました。
それにしても最初に出てくるおもちゃ…ロバでしょ…(笑)

Episode 1


Episode 2
騎兵隊に潜入!
ジョーイやトップソーンを演じる役者さん、ちゃんとこうやって軍馬の動きを学んでいたのですね~。


Episode 3


Episode 4


Episode 5


Episode 6

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